「将来は海外で働きたいので、国際的な資格を取ろうと思います。おすすめは
何ですか?」
保護者が一緒に座る個別相談で、高校生にこのようなことを聞かれた。
「世界中で通用する資格はないと思っていい。国際運転免許証でさえ全ての国で通用
しない。語学力はもちろん、まずは実務経験であり、また、学位が大切になる」
そう答えた。
日本には、貿易事務の資格で『通関士』というものがある。
通関士は世界中で通用する国際資格と、国際派就職を夢見る学生や転職希望者たちが
信じていることがあるが、それは大きな勘違いだ。
私の知っている何人かの通関士なんて、(失礼ながら)英会話の能力は怪しいし、
読み書きだって同じ。
そもそも、役所の既得権益保護のためのドメスティックな「日本国政府の」資格なのだ
(これは税理士などの多くの士業も同じ)。
就職してから取っても、全く遅くはないし。
ところで、先ほどの学位は、資格ではないものの、給与の基準としてだけでなく、
基礎能力を測るモノサシとして機能している節はある。
日本では、文系の大学院を出ても、得するどころか、就職ではマイナス評価がほとんど
だ。
しかし、海外では事情が違う(もちろん、海外と一括りにするのは雑なのは重々承知
しているけれど)。
私は法学修士を無駄にもっているけれど、外国人と話すときに、「アイハブア、マスタ
ーオブローディグリー」とか何とか、合っているのか間違っているのかよくわからな
い、ジャパニーズイングリッシュで話すと、「オー」とした表情をして、少しだけ敬意
をもって接してくれる。
海外は、日本とは比較にならないくらい、学歴社会だと覚悟しておく必要があるだろ
う。
どちらかと言えば、日本は、学歴社会というよりも、試験社会と言っていいのかも
しれない。
語学力や実務経験については説明は不要だろう。
海外で働きたいのであれば、語学力+実務経験+学位なのだ。