「学費の出世払い」の案が出ているが、おかしいと思う 教育の目的は何なのか? 主役は誰なのか? もう一度、考えるべきではないかと思っている

卒業後に年収が一定額を超えたら学費を払うという「学費の出世払い」の案が

出ているが、

www.yomiuri.co.jp

おかしいと思う。

「とりあえず進学しておくか」「進学しなくては損」ということになるからだ。

いつも私が教育資金の相談現場で壁だと思うのは「入学費」だ。

(百歩譲って)出世払いにするのであれば、入学費に限定すべきだ。

入学後は貸与型でほとんどの場合、何とかなるはずだからだ。

在学中は給付型を「獲得」して、負担を軽くするように努めればよい。

ところで、学費を無料にしろという意見を聞くけれど、そんなことは誰にでも言える。

無料というのは耳触りの良い言葉だが、大学や専門学校だって慈善事業ではないから、

「誰かが払わなくてはいけない」ものであり、結局は国民負担、つまり「税金で学費を

賄うことになる」だろう(今でもそうだけど)。

ところで余談だけど、奨学金を控除の対象にするという意見も私にはよく理解できない

(浅学非才を棚に上げていますが)。

奨学金を借りなければ損」という歪なことになりかねない(いずれにせよ、

どの奨学金を控除の対象にするのか、実務上線引きが困難だろうけど)。

また、収入が無かったり低いと役に立たない(控除のしようがないから)。

教育の目的は何なのか? 主役は誰なのか?

もう一度、考えるべきではないかと思っている。

貸与奨学金案内が変わっていた

春の奨学金講演が始まります。

そのため、パワーポイントのスライドや配布資料の改訂作業を進めています。

また、日本学生支援機構2023年度進学者用の「貸与奨学金案内」を入手して、

「どのような変化や影響があるか?」「どのような質問が起こり得るか?」など

あれこれと想定しながら読み込んでいます。

ところで、案内の表紙を見ていると、以下の変化に気がつきました。

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・この冊子では、返還の必要がある奨学金(借入金)について、予約採用(進学する

前の申込み)を前提として説明しています。 

・この冊子を読んで貸与奨学金についてよく理解したうえで、予約採用への申込みを

希望する場合には、別冊「申込みのてびき」に従って申込みを行ってください。 

また、父母等あなたの生計を維持している方にもこの冊子を読んでもらい、貸与奨学金

制度の内容及びあなたが奨学金を利用することについて理解してもらってください。

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赤字の文言が今年度分から追記されていますが、4月1日から18歳成人が始まった

ことによるものだと思われます。

誕生日にもよりますが、3年生から「責任ある大人」として扱われるものの、

「なるべく保護者にも申し込み(契約行為)に関わってほしい」という本音が文言から

伺えます。

しかし、実際には生徒が自力で申し込むのは困難であり、実質的に保護者が申し込ん

でいるというのが実情であり、今更感があります。

進路指導の先生と話していると「法的責任はないものの、申し込みの窓口(高校)

として道義的責任はあるかもしれないので、講演ではなるべく説明してもらえないか」

と仰られます。

ところで、金銭教育も始まりますが、効果には大きな疑問があります(FPが関わって

いても。関わると逆効果かもしれない)。

初年度は話題になるでしょうが、数年後にはおそらく「カリキュラムの中のひとつの中

のひとつ」として、申し訳程度のものになるのではないかと思っています。

貸与型奨学金よりも講師の発言の方が危険ではないか?

先日、高校の進路指導の先生と、日本学生支援機構の給付型奨学金の採用率について

話題になった。

「実は以前に奨学金講演に派遣で来てもらった講師が、貸与型は危険だから借りたら

ダメ。給付型をまず貰うようにして、社会勉強になるからアルバイトを頑張りなさいと

生徒たちに言っていたのです。

他の高校は詳しく知らないですが、うちの高校はごく普通の家庭の生徒が大半なのに

1割いるかくらいですよ。採用率がかなり低いのに、あんなこと言って良いのか疑問に

思いました。」

貸与型奨学金よりも講師の発言の方が危険ではないか?

外国人の保護者や生徒と奨学金

先日、関西の高校で保護者向けの奨学金講演をしたところ、生徒が受講していた。

講演後の個別相談で、相談者全員が帰ったあと、最後に私のところに来て、

言い辛そうに「外国人ですが奨学金を申し込めますか?」と聞かれた。

ご両親は飲食店を営む外国人で、放課後はクラブ活動をしないで店を手伝うそうだ。

「家は本当にギリギリの生活をしていて、本当は私の進学どころではないのは

わかっていますが、やっぱり大学にいきたい。奨学金を借りたいけれど、

外国人は大丈夫なのか不安で…。両親は日本語が不自由で、何とか話せるかなといった

くらいで、講演に連れてきても理解できないと思ったので、進路指導の先生に頼んで

入れてもらいました。」

最近は、保護者や生徒が外国人であることは珍しくなくなっている。

高校や地域によっては、事前に先生から対応を頼まれることがよくある。

日本学生支援機構のホームページでは、

外国籍ですが、奨学金の申込みは可能でしょうか。 | JASSO

となっている。

しかし、念のため、早めに奨学金担当の先生や進路指導の先生に相談しておいて、

日本学生支援機構に確認しておいてもらっておくと良いだろう。

また、担任の先生は、生徒の個別事情を把握しているものなので、早めに取りまとめて

おいて下さいと、普段の教職員研修では話している。

偏見をもたれたり、からかわれることもあったそうだけど、

「日本各地で奨学金の個別相談をしているけれど、珍しくないよ」と伝えたところ、

一緒にいた担任と進路指導の先生に、「○○大学、絶対に合格する!」と言っていた。

金銭教育が高校で始まるけれど、本当に必要なのか、できるのかと疑問に思う

子どもの金銭教育が高校で始まるけれど、本当に必要なのか、できるのかと疑問に

思う。

ウンチクよりも

・うまい話は向こうからやって来ない

信用を大切にする(借りたものは期限を守りちゃんと返すといった)

こういったものだけで十分ではないだろうか?

ところで、高校や大学などで教育資金の講演をしていると、当然、個別相談もある。

例えば、「無料で大学を卒業する方法」といった、虫のいい相談をしようとする人は、

詐欺に引っ掛かりやすいのではないかと思っている。